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「金融危機は今すぐ起きそうではないが、いずれ今後起きる」 [世界の動き]

「金融危機は今すぐ起きそうではないが、いずれ今後起きる」

1)3月危機

 コロナ危機が世界中に広がるという「想定」から、20年3月、株価が急に暴落したばかりか、金・米国債市場からも資金が流出し、機能不全に陥った。暴落を恐れ、あらゆる投資が「現金」へと向かい、流動性が一瞬にして消失した。各国中央銀行は、大量の資金で国債を買い支え、金融緩和を行い、爆発を回避することができた。あれは金融恐慌に至る一歩前でぎりぎりの対応だった

2) 金利低下、金利変動なし
 
 コロナ危機で、各国中央銀行は大量の金融緩和を行い国債を買い支えた。さらに各国政府は中央銀行と組んで、巨額の財政支出に追い込まれた。

 米10年物国債利回りは、20年4月以降、0.7%のままだ。
 イールド・カーブ・コントロール(YCC)を導入した日本は、金利変動がほぼ消えた。
 日本の国債の価格・金利が、「動かなくなって」すでに久しい。金融緩和によるカネ余り主導で株高が続く。クレジット市場もその後を追うだろう。これらのことはすでにバブルの域に入っていることを示している。

 クレジット市場は、「炭鉱のカナリア」で金融危機に際し、まずその価格が動くだろうが、現在はその動きは見えない。金融崩壊をもたらす爆発のマグマが地下で増大しているような不気味な「危うさ」が広がっている。

3)政府の企業への資金繰り支援策

 コロナ危機で各国政府とも、企業に給付金利子補給の実質無利子・無担保融資などの制度で支援している。当面は企業の資金繰り悪化や倒産などを防いでいるが、この先景気が回復しなければ、これら融資は不良債権に転化する。銀行は貸し倒れに備えた与信費用が一段と膨らむ。
 信用コストが膨らめば銀行の財務にも響く。

4)日銀「金融システムレポート」  

 10月22日、日銀は「金融システムレポート」を公表(半年に1度公表)した。レポートは、「新型コロナ感染拡大による回復が滞ると、貸し倒れに備えた与信費用の増加などで大手銀行の自己資本比率が2022年度に最大4.6㌽下がる」と試算している。

リスクシナリオの場合の試算」:銀行は22年度には自己資本規制8.5%を下回る。
   ・大手銀行では自己資本比率:7.6% 19年度比▲4.6㌽
   ・地方銀行では      :7.1% 19年度比▲2.8㌽

 自己資本比率が8%を切ると銀行は貸出を減らす行動をとる。そうなれば、資金繰りが悪化しての倒産・廃業が増加する。

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<日銀>

5)すでにバブルの域か?

 世界の金融の大きな問題は、コロナ発生前でさえ、多くの企業などの借入比率が極端に高かったことだ。
 コロナ危機で、さらに借入比率は拡大しているはずだ。現在はローン返済の猶予を認める各国の大々的な政策で、損失の全容がまだ見えない。

 大手米銀行は、危機に対処するため準備金を積み増しているが、例えば、インド、イタリア、そのほかの新興国・途上国の銀行は備えができていないし、備えることができない。

 世界的に見ると「まだら状」ではあるが、中国など一部を除き、欧米日など多くの国々で経済のV字回復の可能性はますます遠のいている。企業の資金繰り悪化と倒産が、これから顕在化するだろうし、不良債権が積み上がるだろう。
 金融緩和で国債の利回りが世界的に急低下しており、超低金利は銀行から稼ぐ力を奪っている。リターンを求めて高リスク投資を増やせば、金融システムが崩落・爆発する危険を大きくすることになる。

 国際決済銀行(BIS)ヒュン・ソン・シン
 「コロナショック当初(20年3月)は、流動性危機が最重要課題だったが、現在はそれが支払い能力の危機へと変わってきている。銀行はいずれ(脆弱な企業を襲う経営破綻と不良債権の波の)矢面に立つことになる
 「銀行は危機の発生源ではないにしても、無傷ではいられない」 
 「調査結果は、すでに融資基準が相当厳しくなっていることを示している」(10月15日、日経)

 世界銀行・首席エコノミストカーメン・ラインハート
 「金融業界の脆弱性に目を向けると長期的には、かなり悲観的にならざるをえない」 
 「信用収縮が起きる公算は本当に大きいと思える」(10月15日、日経)

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<世界銀行>

 金融システムの慢性的に負荷が増大している。ただ、金融危機は必ずしも、リーマン・ブラザーズが破綻した時のような道筋で爆発するわけではない。
 どのような道筋を経て金融の混乱、金融危機が起きるか? あらかじめ想定することは難しい。
 が、おそらく、次のような過程をたどるのではないか?

 今後、企業への資金繰りが悪化し倒産に至れば、貸し手である金融機関にデフォルト(債務不履行)がじわじわと増えるだろう。そうなれば、金融システムにかかる負荷が増大し(自己資本比率が下がり)、与信条件が厳しくなるだろう。その過程が、仮に急速に進めば、信用収縮、さらには金融恐慌へと至るだろう。

 20年3月以降、各国の中央銀行は、市場機能を維持するためには「必要なことは何でもする」意思を明確にしているし、欧米の銀行の自己資本率は08年に比べまだ高いことなどから、今すぐ金融危機には至らないかもしれないが、いずれ起こるだろう。
 いまは金融爆発に向けて可燃物を蓄積している状態だ。(10月27日記)
(文責:小林治郎吉)










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