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米大統領選挙で何が変わるか? [世界の動き]

米大統領選挙で何が変わるか?

1)トランプの外交政策とは? 何をしてきたか?

米中対立をあおり、世界を分断した
 中国に対し貿易戦争を開始し、ハイテク戦争にまで発展させた。米ドルが国際通貨であることを利用し、「安全保障」のためという根拠のない身勝手な理由で、中国企業・個人に「経済制裁」を加え、中国ばかりか友好国へも中国製品(ファーウェイ製の5G 基地局など)を採用しないように脅しをかけてきた。傍若無人の振る舞いだ。この米中対立は世界経済を分断しつつあるし、政治的な対立をも生じさせている。一方的に米国に原因と責任がある。中国とのハイテク戦争を、民主党は支持している。

 中国は経済封鎖、制裁に対抗するために、半導体の自国開発・調達策をとらざるを得なくなっている。そのために多額の開発資金を実際に投資している。今や半導体の設計開発ソフト・製造技術・素材材料などにおいて全面的な開発競争に入っている。ファーウェイは携帯電話や基地局の輸出が不可能となり、中国国内以外の売り上げは落ちている。当面は米国有利に展開しているようだが、最終的にどちらが覇者になるかは不明だ。中国の半導体開発、自国調達ができるようになれば、いずれ決着がつくだろうが、それまでは数年単位の長い時間を要するだろう。

中東の新たな枠組みをつくった
 在イスラエル米大使館をエルサレムに移した、イスラエルが第3次中東戦争で占領したままのシリア領ゴラン高原のイスラエル主権を、トランプ政権は初めて認めた。
 そのうえで、イスラエルとバーレーン、UAEとの国交回復実現を、トランプ政府は背後から推し進めさせた。今後、サウジを含めた湾岸諸国とイスラエルとの経済関係が拡大していくだろう。イスラエルは湾岸諸国、ば^レーンから石油を輸入することができるようになった。

 パレスチナ問題の正当な解決を強く主張してきたリビア、シリア、イランにを敵視し、リビア、シリアには戦争を仕かけ、様々な理由をつくり出してイスラエルとともに軍事的に攻撃してきた。その一方で米国は、親米的なサウジや湾岸諸国に対する「アラブの大義」を放棄させ、イスラエルとの友好関係の拡大へと転換させてきた。中東の支配者たろうとするサウジはこの米国の中東政策に乗った。
 米政府は、不法の上に不法を重ねている。中東における対立は新たな内容をはらみつつある。

③トランプの「悲願」公約であった米軍の紛争地からの撤退や、ロシアとの良好な関係の構築は進展しなかった
 この「公約」に対して、米支配層・軍産複合体があらゆる手段を動員し反対し押しとどめた。「ロシア疑惑」など、まったく証拠も示さないフェイクニュースで世論をつくり、プーチンのロシアとの接近をさせなかった。米民主党は米支配層・軍産複合体の意向にしたがって動き、公約を実現させないように振る舞った。オバマ、ヒラリー米民主党政権は、軍産複合体と「親和性」高かった。
 その結果、トランプ政権は米支配層、軍産複合体の意向に沿った軍事戦略をとることになった。軍事戦略はオバマの時とほとんど変わらず、軍産複合体の意向通りとなった。
 ただしその軍事戦略は、例えば中東ではうまくいっていない。シリアでは米軍は敗北し撤退した、アフガンでも米軍は現地での戦闘で敗北を重ね、撤退へと追い込まれている(=タリバンとの和平交渉し米軍は撤退しようとしている)。イラクでも米軍の存在は人々の非難の対象となっている。

「パリ協定」からの離脱、地球温暖化対策の国際的枠組みから離脱した。トランプの支持基盤である石炭・石油業界の利益確保を優先した。トランプは「取引」で目先の成果を上げ、石炭・石油業界に利益をもたらし、支持を得ようとした。

⑤18年に「イラン核合意」を破棄した。英仏独ロ中とともに努力の末、「核合意」したにもかかわらず、米国だけが勝手に破棄した。その「狙い」は、イランの原油輸出を「制裁」で抑え、米シェールオイル輸出を増やすという目先の利益獲得のためだ。中東の緊張を高めたい軍産複合体は、この「核合意破棄」を支持した。米国支配層内では特に強い反対はなかった。
 トランプ政権はベネズエラへのクーデターを支援し、介入したが、「失敗」に終わった。しかし、ベネズエラのマドゥロ政権は「民主的でない」とイチャモンをつけ「制裁」を発動し、ベネズエラ石油の輸出を減らすことに成功した。そのことにより、米シェールオイル輸出を拡大させた。米民主党もベネズエラ政府批判、制裁では同調している。

⑥トランプはコロナ危機のさなかに、WHOを脱退した。米国でのコロナ対策に失敗し、感染拡大を招いたので、中国とWHOを名指しして非難し、自身への批判から逃れようとしている。

⑦NATOへの米国の関与・負担に疑問を呈し、各国に軍事費増大を求めた。日本への軍事負担要求、米兵器の購入要求を強め、安倍政権は従った。日本政府に対してはトランプの「取引」は成功した。

⑧北朝鮮との関係改善をはかった。実際には進展はなく、一つの「ショー」を演じて見せた。

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<バイデン元副大統領とトランプ大統領>

2)バイデンになったら、何が変わるか?
まず外交は

対中国政策については、変わらない
 共和党・民主党ともにトランプ政権以前から、中国の台頭・影響力強化を「敵対視」し、抑えつけようとしてきた。対中強硬策は、米国内では超党派の路線なので、バイデンになっても変わらない。発言の「トーン」は変わるだろうが、実質は変わらない。バイデンになっても、米中対立は激化し、経済的なブロックの形成から、政治的な対立にまでおよび、世界はいっそう分断されるだろう。

中東での新たな枠組み、すなわちイスラエルとバーレーン、UAE間の国交回復はそのまま引き継ぐはずだ。サウジとイスラエルの国交回復、経済関係の実現・拡大を支えるだろう。
 サウジや湾岸諸国にとっては、原油収入があるうちに早急に「時代の流れ」である「エネルギー転換」を実現し「産業転換」しなければならない。でなければ未来はない。そこにイスラエルの技術が必要なのだ。米国の傘下でこれを実現しようとしている。バイデンもこれを支えるだろう。
 リビアのカダフィ政権を潰し、シリアのアサド政権に戦争を仕掛け、イランを敵視する中東政策の基本は変わらないだろう。バイデンとて、中東政策において親イスラエル、親サウジの立場は変わることはない、したがって、パレスチナを見放し、イラン敵視する政策は、大きくは変わらないだろう。

③NATOや日本韓国そのほかの同盟国との関係は、トランプの乱暴なやり方は控え「波風」を立てないようにはするだろうが、基本は変わらない。日本を含む同盟国に対し軍事費の負担増、米兵器購入要求は引き続き強要する。とくに東アジアにおいて、日本や韓国に「相応の軍事費の負担」を強要するだろう。

「パリ協定」復帰、WHO復帰、「イラン核合意」復帰は可能だ。バイデンは復帰すると言っているし、おそらく復帰するだろう。
 トランプ政権で生じた同盟国との間の「波風」を収め、同盟国の協力と「相応の負担」を求める従来の米民主党の外交政策に転換するだろう。

 バイデンは国内政策においては、いくらか異なる主張をしている。しかし、実際に違った政策を実行するかどうか、実際にできるかは、はなはだ疑問だ。おそらく公約通り実現できる可能性は高くない。

新型コロナ対策は、しっかりと対策を立てなければ、経済活動が再開できない。中国はすでに20年7~9月期に前年同期比で経済成長するまでにコロナを抑え込んでいる。
 バイデンはコロナ対策を公約の一つに掲げている。中間層、貧困層の「コロナ不安」を票に取り込もうという戦略からだ。
 トランプでもバイデンでもコロナ対策はせざるをえないだろう。しかし、3,000万人以上もの無保険者が多いこと、資本家はコロナ対策よりも経済活動を再開したいことから、そう簡単に解決はできない。まず財源を確保しなければならない、予算を議会で通さなければならない。それらがまずやるべきことだが、どれほどできるかで対策をどれくらい実行できるかが、政権発足後、半年ほどたてばいずれ判明するだろう。
 バイデンになっても、それほど急にコロナ対策が効果を発揮するとは思えない。

⑥バイデンは、「トランプ減税」(17年)の撤廃と大企業と1%の富裕層の税負担を増やす公約を掲げ、大多数の人々、没落した米中間層へアピールしている。また、「オバマ・ケア」の復活(「国民皆保険制度」ではなく、「オバマケア」)も訴えている。病気になり多額の医療費負担で没落する中間層が増えている。失業して健康保険を失った人も多い。
 掲げている公約は確かに大きく異なる。米社会の貧困化の進行は悲惨な事態を招いているので、格差是正を取り組まざるを得ないのだが、大企業・富裕層は抵抗、もしくはすり抜けに努めるに違いないし、財源の問題もある。民主党内には、国民皆保険制度に反対する勢力がいて、バイデンを「社会主義者」と非難している。容易ではない。実際に、バイデンがどの程度実現できるかは疑問が残る。実現には市民運動、民主運動などの継続した運動が、一層必要となるだろう。

エネルギー転換、温暖化対策を、バイデンは取り組むと表明している。実際のところ、石油・石炭から再生エネルギーへの転換は米経済にとっても中長期的に避けることはできない。バイデンになれば、エネルギー転換、新しい産業革命により一歩、踏み込むことになるだろう。そこに、資本にとっての市場と利益があり、雇用も拡大する。エネルギー転換は欧州や中国との競争になる。2兆ドル投資すると表明しているが、実行できるかどうかは、まだわからない。(日本政府のように、総花的に予算を編成し、結果的には「エネルギー転換が遅れる」事態となることは十分に予想できる。)

 石炭産業、シェールオイル産業などはトランプの支持基盤なので、トランプ政権のままなら、これら産業により配慮するだろうが、彼とて「エネルギー転換」を避けることはできない。実際に、オイルメジャー資本でさえ、石炭・石油など炭素系エネルギーから再生可能エネルギーへ投資を転換しつつある。

3)結論として
 バイデン大統領になったとしても外交政策はほとんど変わらないし、国内政策を転換するにはいくつもの解決しなければならない難題がある、結局のところ、いつもの大統領選挙と同じように、盛り上がった大きな「興奮」の割には、大きくは変わらないのではないかと推測している。

 したがって、11月3日に「革新的な新しい世界が訪れる」ことはない

 米国社会の深刻な貧困化、分断が進行した背景にあるのは、米国の衰退であり中国の台頭であり、世界の無極化である、そのなかで現れた米国の横暴な振る舞い、「悪あがき」である。米国が世界一の軍事力を持っていること、米ドルが国際通貨であることから、今のところ、この「悪あがき」ができるのだ。

 米国内では富者に富を集中しこれまでの既得権益層を満足させてきた。その結果、米国社会で起きているのは、中間層の没落であり貧困層の増大、格差拡大、米社会の荒廃である。
 トランプは社会の分断のなかで広がる人々の不満と不安を、敵をつくり、人種差別を煽り、フェイクニュースでごまかしてきたのだ。
 
 米支配層にとって、このような政府、やり方を「少し」修正せざるをえないところにまで追い込まれている。ただし、米支配層の利益を優先するなら、大きく転換することはなく、「落日の帝国」の様相を一層深めることになるだろう。

 トランプだから「暴君」として振る舞ったのではない。衰退する米国の「悪あがき」なのだ。バイデンになって「衣装」は変わるかもしれないが、「悪あがき」そのものは変わらない。  したがって、われわれの悪夢も当分、続く。(10月26日記)







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