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ソレイマニ司令官の暗殺 [世界の動き]

米軍は中東から撤退せよ!
それが、イラン戦争を回避する道だ!

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<イラン・革命防衛隊ソレイマニ司令官>

1)米軍がソレイマニ司令官を殺害

 ソレイマニ司令官暗殺という米軍の行為は犯罪だ! 国際法違反であり、イラク主権の侵害だ!

 イラン革命防衛隊司令官ガセム・ソレイマニ将軍は12月29日、アル・カイム近くのシリア-イラク国境で、米軍が殺害した31人のイラク兵士の葬儀列席のためイラクを公式訪問していた。1月3日、イラクに駐留している米軍はこれを狙い、バグダッド空港近くでソレイマニ将軍を暗殺した。

 これは米軍の犯行である。トランプは暗殺を指令したと公言し、米国防総省も暗殺作戦を実行したと表明している。米国防総省声明は以下の通り。「大統領の指示で、米軍は、国外のアメリカ要員を保護するため、断固とした防衛措置をとり、アメリカが指定した外国テロ組織、イスラム革命防衛隊のクッズ部隊のガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。

 米軍によるイラン高官の1人、ソレイマニ将軍暗殺は明確な国際法違反であり、かつイラク主権の侵害だ。このことをまず指摘し米政府を厳しく批判しなければならない。

 しかし、驚くべきことに間違いと犯罪を犯した米政府を批判しない、このような初歩的な批判さえしない政府が存在する。英、日、欧州各国政府である。またこれら政府の支配下にあるメディアも米政府の無謀ぶりを批判しない。米国とともに、「先進国」と自称している各国政府が、このような実に野蛮な行動をとっている!

 戦争の危険が迫っており、その責任は米政府にある。各国政府は米政府を批判し、米政府を押しとどめなければならない。そんな当然のことをせず、利害から米政府に追随するばかりの「先進国」と自称する政府連の責任も重い。

 日本のメディア、主要新聞、NHKなどは、米軍のソレイマニ暗殺が国際法違反・国連憲章違反であり、イラク主権の侵害であるという基本的な事実を報道しなかった。そのことで、これらメディアのイラン報道や主張は、信用ならないことを証した。

 米国の振る舞いは、例えば1930年代のナチスと同じだ。同時に、ナチス台頭を許した欧州各国の「宥和政策」以来の、危険で臆病かつ身勝手な態度を「先進国」はとっており、より大きな戦争へエスカレートする極めて危険な情況をつくり出している。

2)暗殺は米―イラン戦争に拡大しないか? 

 ロシア中国の外相は、「スレイマニ将軍殺害は国際法違反である、中東情勢が著しく悪化した」と憂慮を表明した。1月3日、ロシアとドイツの外相は電話協議し「米国の行動は国際法に反する」との認識で一致した。米政府を批判することで、緊張の激化、戦争への動きを止めようとしている。「信頼できるまともな対応であり行動」だ。米政府を孤立化させて初めて、戦争を止めることができる。

 米―イラン戦争へ突入することを、世界は恐れた。

 イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「ソレイマニ将軍と彼の仲間の血で塗られた犯罪者連中には、厳しい報復が待ち受けている」と報復を宣言し、実際に1月8日、イラク米軍基地へ報復のミサイル攻撃を行った。同時に、アメリカとの戦争に入るつもりはないことも表明した。
 トランプはイランから報復のミサイル攻撃を受けた後も、イランと戦争を始めるつもりはないと表明した。

 軍事的に注目しておくべき点がある。1月8日のイランによる報復攻撃は、第二世界大戦後初めて米軍基地に(弾頭火薬700㎏相当の22発の)ミサイルの雨を浴びせたことになる。米基地からは一発の防衛ミサイルも発射されず、米軍のパトリオット防空システムは機能しなかった。数カ月前(19年9月)、フーシ派による無人ミサイル機攻撃に対し、サウジアラビアの石油・ガス施設を防衛しそこねたパトリオット防空システムの失敗を、またもや繰り返したのだ。
 
 テヘランが中東の米軍基地とイスラエルへの攻撃を望めば(3,000㎞程度の射程の)、米軍は止めることができないことが明らかになった。もっとも、イランは中距離ミサイルを持ってはいるが、ICBMも核弾頭も持ってはいない。
 
3)なぜ米国はイランと戦争するか?その理由がない 

 なぜ米国はイランを脅すのか?戦争を仕かけるのか? そもそもその理由がない。

 アフガニスタンでの米国の戦争は、ワシントン・ポストが公表したアフガニスタン・ペーパーが述べた通り、敗北している。リビアも破綻国家にしてしまった。5年間のたゆまないサウジアラビアによる空爆と封鎖がつくりだした政界最悪の人災に、イエメンは耐えている。米国が5億ドルの資金供給し、武装させたシリアの「穏健」反政府派=「自由シリア軍」は、ISやヌスラ戦線に合流し、恐怖で違法な統治を行った後、シリア国民の支持を失い、打ちすえられ国外に追いだされた。傭兵集団を使って政権を倒す米政府の戦略は失敗に帰した。この失敗のために、米国のみならずサウジやカタールなどの支援を加えれば、5兆ドル~7兆ドルを浪費したことになる。

 では、なぜ米国はイランを脅し、戦争を煽るのか? イランが遵守してきた核合意から米国だけ一方的に離脱するのか? なぜ既に極めて激しやすい地域を、一層不安定にするのか?

 米国支配層であるネオコンと軍産複合体にとって、多額の軍事費を奪い取り続けるためには、緊張状態、戦争状態を続けるスケープゴートが必要なのだ。それがイランなのだ。
 イスラエルを正面から批判しパレスチナ問題の解決を強く要求しているのは、いまではイランでありシリアだからだ。だから、シリアが標的となったし、イランが次のスケープゴートにされたのだ。

4)米国はイランと戦争できるのか? 

 ところで、米国はイランと本格的な戦争ができるのか?
 トランプはイランに取引のための脅しをかけるつもりだった。戦争する準備をしていなかったが、ソレイマニ司令官を暗殺した。イスラエルの働きかけがあった可能性が高い(田岡俊次氏)。2020年大統領選挙に向け、支持率が上がると判断したのだ。危険極まりない行為だ。

 アフガン、イラク、リビアでの当初の戦闘において米国は確かに勝利したが、全体としてみれば戦争に敗け続けている。

 アフガニスタン・ペーパーが暴露した通り、アフガン戦争ではすでに敗北しつつある。米政府の支持してきたカルザイ政権は汚職だらけで、米軍が撤退すればすぐにでも崩壊する。米政府はタリバンとの和平交渉を極秘裏に始めたが、タリバンに交渉を拒否されている。18年間で1兆ドルつぎ込んだアフガン戦争は米国の敗北に終わりつつある。ただ、いったん始めた戦争はなかなかやめられないのだ。

 イラクのフセイン政権を倒したものの、現在のイラク政権は多数のシーア派が主導権を握る政府になった。米軍はイラクから出て行け!と要求されている。

 シリアのアサド政権を倒そうと、傭兵であるIS、ヌスラ戦線、「自由シリア軍」を送り込んだが、反政府軍の支配下での無法な統治はシリア国民に支持されず、傭兵軍団は敗走した。米国のシリア戦争戦略は失敗した。いまシリアには1,000人ほど米軍部隊が、「裸の状態」で(=傭兵を従えることなく)存在するだけだ。

 リビアでは、不法にも(=国連憲章に反して)NATOが空爆し、地上では傭兵であるLIFGを使い、カダフィ政権を倒したが、生まれたのは混乱だ。NATOにも米軍にも、この混乱をおさめる力がない。シリア戦争を終わらせたロシアが、リビアでの対立の仲介に乗り出している。ここでも米国の影響力後退が露わとなった。

 これら中東の4ヵ国において、米国は当初の戦闘に勝っていても、最終的に戦争に勝つことができなかった、むしろ敗けているのだ。ベトナム戦争とよく似ている。

 このような状態で、新たに米国はイランと戦争を始めることができるのか? イランは8,000万人の人口があり、面積は日本の3倍である。米軍を100万人単位で投入して初めて、当初の戦闘に勝つことはできるかもしれないが、最終的に戦争に勝利する見込みはない。
 米国はとてもイランと戦争をすることはできないのだ。
 
5)イラクに米軍は駐留し続けることができるか?

 イラクの人々は米国を同盟者や解放者としては見ていない。占領されることを望んでおらず抵抗するだろう。米国はこれまで投入した戦費を賄うため、イラクの石油収入の半分をよこせという法外な要求をしている。まったく逆だろう。大量破壊兵器を持っているという「嘘」を根拠にフセイン政権を倒した。その際多くのイラン国民が犠牲となった。米国は逆に戦時賠償をしなければならない立場なのだ。

 ソレイマニ将軍暗殺に対するイラクの人々の抗議行動は、一つの政治的焦点を浮かびあがらせている。米軍のイラクからの撤退だ。

 イラクの過半数を占めるシーア派勢力を中心に、米軍基地や大使館、米国人を標的とした広範囲にわたる抗議行動が拡大している。イラクのシーア派は人口の6割を占めており、イラク各地でもヤンキーゴーホームの声が上がっている。すでに、石油施設に関係する米国人ビジネスマンとその家族のイラクからの退去が続いている。

 米軍は現在、イラクにわずか5,200人しか駐留していない。これまで「米国の手先」であったヌスラ戦線やISはシリア戦争の過程で敗走し壊滅している。現時点において、米軍は手足となる傭兵集団を持っていない。米軍単独で戦争、もしくは戦闘に対応しなければならない。イラク内の米国民は全員「即」出国するよう言われ、大使館と領事業務は閉鎖された。ビジネスにおいても米国の影響力は大きく後退する。

 1月5日、イラク議会は「外国軍部隊の駐留を終わらせる」決議を採択した。駐留米軍の撤退を求める決議だ。米軍のイラク駐留の根拠は、2003年、フセイン政権打倒後の米国とイラク政府が結んだ「戦略的枠組み合意」である。イラク議会は決議を採択し、米軍駐留の根拠である「合意」の破棄を求めている。イラクのアブデル・マハディ首相は、全てのアメリカ部隊撤退を求めるため国会緊急会議を要求した。

 「イラク指揮官の標的暗殺は協定違反だ。それはイラクや地域で戦争を引き起こしかねない。それはイラクにおける米国駐留条件の明確な違反だ。私は議会に必要な処置をとるよう求める。」(アブデル・マハディ首相)
 アブドル・マハディ首相は決議に賛成したが、合意の破棄までは言及していない。

 米軍のイラク駐留は、イラク政府の同意が前提だ。米国と米軍の存在感が揺らいでいる。トランプ大統領は1月5日、「イラク政府が米軍撤収を一方的に要求した場合、前代未聞の経済制裁を科す」と脅した。イラクからの米軍撤退を迫られている危機的な情勢を、トランプはそのように表現した。

 この先、イラクの米軍基地撤去が一つの政治的焦点となる。イラクにおける米国と米軍の影響力が後退していく過程が始まったと言える。これがどのように、どの程度すすむかがイラクと中東における今後の行方を決める。

 デリゾール近辺のシリア米軍基地は、地続きのイラク米軍基地によって存在できているのであり、イラクから米軍が撤退すればシリアの基地は維持できない。イラクからの撤退は、中東における米軍機能の喪失であり、米軍の存在感が一挙に失われる。

6)米軍は撤退せよ!
 それが、中東の安定と平和をもたらす

 米による対イラン戦争はとりあえず回避されたようだ。トランプは戦争の準備をしていなかったし、例え準備していても最終的に戦争に勝利することは不可能であると、極限の危機のなかで米政府と米議会首脳、米支配層は判断したようだ。
 ただ、米―イラン戦争への突入は押しとどめられているものの、緊張が高まったままの極めて危険な状態は続いている。

 ソレイマニ暗殺によって、中東における米国と米軍の影響力がさらに低下した。この事態にどのように打開するか、米国はその手段をもはや持っていない。

 対イラン戦争を煽ってきた米同盟国サウジは、イエメンのフーシ派勢力による無人機ミサイルで石油施設を攻撃されて戦争する態勢にないことが明らかとなった。愚かなムハンマド・ビン・サルマン皇太子といえども、この現実をやっと理解した。米国の手先だった傭兵集団も敗走した。サウジや湾岸諸国が「脱落」した今、米国に対イラン戦争を煽っているのはイスラエルだけだ。

 米軍が中東から撤退すること、これが中東の安定と平和をもたらす。
 今こそそのようにすべきであるという認識が中東の人々のあいだに広がりつつある。
 有志連合などに加わらず、米国とイスラエルを徹底的に孤立させること、これがイラン戦争を回避する道だ。






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