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日立が40人のフィリピン人実習生を解雇 [フィリピン労働運動]

日立が40人のフィリピン人実習生を解雇

11月16日 帰国を前に 比実習生.png
<2018年11月16日、帰国前の交流会で、フィリピン人実習生、「スクラムユニオンひろしま」のメンバーなどと>


1) 日立が40人のフィリピン人研修生を解雇

 2018年9、10月のことだが、日立製作所が笠戸事業所(山口県下松市)で働くフィリピン人技能実習生40人に解雇を通告した。解雇された笠戸事業所のフィリピン人技能実習生は、最終的に99人にのぼるという。

 どうしてこんなことが起きたのか?
 そもそも日立製作所が、「技能実習生」(3年間、技能実習生として日本企業で働く制度)として入国させたにもかかわらず、実際には単純労働者として使用し、技能を学ぶ目的とは違う作業、実習生によれば単純労働をさせたことが問題なのだ。「技能実習生」という名前で入国させながら、日本人のやりたがらない低賃金労働、単純労働をさせ、3年で帰国させるという事例は、日立だけでなく日本中どこでも広く行われている。「技能実習生制度」という看板の裏で、「偽善」がほとんど公然と行われている。
 
2)不都合が起きたら「在留期限」で追い出す! 実習生制度
 
 実習生たちのうち20人は配電盤や制御盤をつくる「電気機器組み立て」を学ぶために来日した。母国の大学で電気工学を学んできた者もいる。しかし、ある実習生(24)によると、仕事の内容は、鉄道車両に使うワイヤーや電線をひたすら引っ張る単純作業だったという。

 フィリピン人実習生が「笠戸事業所では単純作業ばかりで、本来の技能を学べない」と日立製作所や国の監督機関に訴えたところ、法務省や国の監督機関「外国人技能実習機構」が監査に入り、「制度の趣旨に沿っていない疑いがある」として、日立における「2年目以降の実習計画」を認めないことにした。そのため、3年間の実習契約で入国したフィリピン人実習生は、2年目以降、日本にいられなくなったのだ。ただし国側は、1年目の笠戸事業所での実習が適正かどうかの判断はいまだ示していない。示す前に、実習生たちは在留期限を迎えたのである。

 日立は2年目以降の在留期限がなくなったことを理由に、フィリピン人技能実習生に解雇を通告した。このままだと、年内の賃金は支払われず、2年目以降の契約は実行されないまま、国外追放になってしまう事態となったのだ。

 この経過を見れば、日立と「外国人技能実習機構」はグルだ! 裏でつながっている、と非難されても仕方がないだろう。

 「技能実習生制度」の「欠陥」が、見事に暴露された。実習生は、実習生制度の趣旨にしたがって、日立や国側に訴えたのだが、訴えた実習生を保護する制度がまったく欠落していた。そればかりか、日立も国も、起きた問題、制度の欠陥を解決しようとはしなかった。「在留期限」を持ち出して「トラブル」を起こした外国人労働者を追い出す「仕組み」を機能させた。「外国人技能実習機構」は、「技能実習生」に起きたあらゆる事情を最もよく知る立場にあるはずだ。知っていたうえで「追い出し」の実行役の役目を果たしたのだ。

 なんと、卑劣で制度であることか! なんと、卑怯なやり方か!

 実習生に「落ち度」や責任があるわけではない、日立に責任がある、実習生を保護する仕組みのない制度を運用している国に責任がある。しかも、日立が違法であるという判断を早く出さないままにしてて、在留期限を迎えさせ追い出しを実行する国に、さらに重大な責任がある。

 「落ち度」や責任のない実習生は帰国させられて、要するに、体よく追い払われて、おしまいにされてしまいかねなかった。

3)声を上げ闘ったフィリピン人実習生 

 未払い賃金もあり、残り2年間の契約もある、日立との交渉は終わっていない。それなのに在留期限が過ぎたとして、追い出されようとしていた。あまりにひどい扱いに怒った実習生たちは、地元の個人加盟労組「スクラムユニオン・ひろしま」に相談した。実習生たちは日立を相手取って損害賠償請求訴訟を起こす方針を決め、その準備もした。「泣き寝入り」せずに、自分たちの権利のために、そして次に来る実習生の権利のために、戦ったのだ。
 
 弁護士や労働組合を交えた交渉の結果、解雇を受け入れたうえで、「年内は月額約10万円を補償、年内に国が実習を許可しなかった場合、残りの実習期間約2年分の基本賃金相当額を全額補償する」内容で、11月上旬に合意書を交わした。


4) 「技能実習生制度」の手直しで、

外国人労働者受け入れ拡大をすべきではない!


 日本の代表的な企業、日立製作所が、「単純労働、3年での使い捨て労働」として、「技能実習生」制度を利用していた実態が暴露された。

 外国人労働者受け入れ拡大の議論が熱を帯びているが、日本の制度、日本企業は、受け入れる制度、態勢を備えていない。実習生たちは「私たちの権利が認められる制度で働きたい」と声を上げた。これに応えることのできる日本政府や企業ではなかったし、いまも変わっていない。

 外国人労働者はモノではない、ヒトだ。「技能実習生制度」は、「表向きの説明」は偽りで、日本政府が3K労働における労働力不足の手っ取り早い補充として制度設計したものだ。ほとんどの雇い主は、「技能」を教えるつもりなどない、3年間で使い捨てて追い出す、期間を限った低賃金労働者として扱っている。実質、そのような制度として運用されてきた。

 面倒なことが起きたら帰国してもらう、そう考えているし、そのように扱ってきた。政府も日本企業も労働力不足のための目先の対応として、外国人労働者を手っ取り早い「モノ」として扱う実態が暴露されたのだ。
 「在留期限」で地位を不安定にすれば、「権利を振りかざすことなく文句も言わないでよく働くだろう」、日本政府や日本企業は、こういう計算をしている。

 言っておかなくてはならないことは、フィリピン人実習生が、違法状態を指摘し、解雇されても自らの権利のために戦ったから、実態が暴露されたということだ。日本政府や日本企業の醜悪な姿が明るみに出たということだ。

 暴露されずに、泣き寝入りとなり、国外に追放された外国人労働者はその何十倍、何百倍もいるだろう。ほとんど大多数だろう。

 彼らはこのような国、日本をどのように思うだろうか? 清潔で整理整頓されているかもしれないが、人扱いせず無権利で働かさせる多くの日本企業のことを、どのように思っただろうか?

 フィリピン人技能実習生99人のうち20人は、11月18日、帰国した。
 実習生たちは、労働者の権利を認めよ! 使い捨ては許さないという、彼らの戦う姿、その足跡をこの地に確かに記して、帰国したのである。

 ※山口放送記事から一部引用。

10月8日、「ユニオンひろしま」土屋委員長.png
<日立と交渉した「スクラムユニオンひろしま」土屋委員長、弁護士>
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